オゾンの安全性と危険性
この記事で知ってほしいことは、オゾンの安全性や危険性の表面的な話だけではなく、その本質です。(とはいえ、表面的な話も本質をつかむために重要です)

真偽が定かではない二次情報や三次情報がさもそれが真実かのように語られ、その発信者は本質に迫ったかのように満足し、またその情報がSNSによって拡散される時代です。正直、オゾンに関する話題もそういった場面をTwitterや匿名の掲示板などでしばしば見かけます。

「オゾンの安全性と危険性」を考えたとき、この記事がウェブ上でもっとも分かりやすく、ユーザーが知りたいことに漏れなく言及し、そして本質に迫るコンテンツとなるようにまとめたいと思います。

この記事を読んで分かること

オゾンの安全性と危険性が分かるだけでなく、信頼できるソースをもとにどこまでの濃度が安全なのか、安全な濃度を超えて利用した場合に、人体に与える影響は何なのかが分かる。「安全性」と「危険性」の範囲が具体的に分かる。

オゾンの安全性と危険性を知る前に

「オゾンは安全なの?危険なの?」と度々話題に上がっています。
人は防衛本能からなのか、「知らないことは怖がる」という傾向にあります。怖がることで対象を遠ざけ、自身を守るわけですが、それも1つの防衛手段だと思いますし、多かれ少なかれすべての人にそのような側面はあることでしょう。
しかし、情報収集をするうえで、知らないことを怖がっているようでは真実にはたどり着けません。

知識や情報があまりない状態で悪評(ここでは、オゾンは無条件に危険と断定する意見)を耳にすると、その悪評の内容が確かなものなのかどうかを(知識や情報が不足して)判断できず、その恐怖心や先入観も手伝い、「やっぱりオゾンは危険なのか!」と信じ込んでしまうケースが少なくありません。

この記事を読んでいる方には、ご自身がこれまで見聞きしたオゾンに関する評判は一度忘れ、先入観・思い込み・偏見がないフラットな状態でこの記事を読んでいただければと思います。

では、冒頭で述べた「オゾンは安全なのか、危険なのか」について、この問題の結論を先にお伝えしましょう。

結論は、「オゾン濃度と利用環境による」です。

逆に言うと、濃度や時間に詳しく触れず、「オゾンは危険だ」「何を言っているんだ。オゾンは安全だぞ」という議論には1%の価値もありません。

上記を踏まえ、ここではオゾンの安全性と危険性についてそれぞれ詳しく解説します。
 

オゾンの安全性

オゾンの安全性
まず、この場合の「安全性」とは何を指すのか考えてみましょう。
多くの人の考えが「安全性=人や動物に悪影響はないのか」という意見で一致すると思います。

オゾン発生器には「業務用」と「家庭用」があり、両者の大きな違いはオゾン発生量です。
オゾン発生器の選び方」で詳しく述べているように、家庭用と業務用の製品では10倍〜400倍と、比較にならないほどオゾン発生量に違いがあります。
そして、そのオゾン発生量に関連して、決められている大事なポイントがあります。
それは、わずかなオゾンしか生成しない家庭用は「有人環境(動物含む)」で使用し、多量なオゾンを生成する業務用は「無人環境(動物含む)」で使用するように決められている点です。

では、その「家庭用」「業務用」の振り分けは一体何によって決められているのかといいますと、各製品のオゾン発生量や運転方式等をもとにメーカー各社で決定しています。
たとえば、国や団体が「オゾン発生量◯◯◯mg/hr以上は業務用として販売し、△△mg/hr以下は家庭用として販売しなさい」などと特別な取り決めがあるわけではないのです。

上記を踏まえたうえで、オゾンの安全性は「有人環境(家庭用)」と「無人環境(業務用)」に切り分けて考えべきです。

何故なら、人やペットがいない無人環境で扱う業務用オゾン発生器でつくるオゾン濃度環境を、そのまま人やペットがいる有人環境下に当てはめて考えることは意味がないからです。
よって、ここではさらに「有人環境(家庭用)」と「無人環境(業務用)」に切り分けて、その安全性について言及します。
 

有人環境(家庭用)におけるオゾンの安全性

有人環境下におけるオゾン濃度については、主に2つの基準が目安にされています。

①室内環境基準
室内環境基準というのは、室内において有人環境下でオゾンを使用する際の基準になります。
日本国内では主に日本空気清浄協会、米国ではアメリカ合衆国食料医薬品局(FDA)が次のとおり公表しています。

a.日本空気清浄協会
オゾンを発生する器具による室内ガスの許容濃度(設計基準、暫定)
最高:0.1ppm
平均:0.05ppm

b.アメリカ合衆国食料医薬品局(FDA)
最大許容濃度:0.05ppm(24h)

オゾンに関する室内環境基準については、日本空気清浄協会が定める「オゾンを発生する器具による室内ガスの許容濃度(設計基準、暫定)」というものがあり、「最高値で0.1ppm、平均値で0.05ppm」とされています。有人環境で使用する多くの家庭用オゾン発生器はこの基準を念頭に、製品の設計がされているケースがほとんどです。
米国でのオゾン濃度に関する室内環境基準はというと、日本より厳しく「最大許容濃度」が「0.05ppm」となっています。理由は、何でも高額訴訟に発展するお国柄(※)ということもあり、このような数値になっているものと考えられています。
※スタバのコーヒーが熱すぎるという理由でスタバ側が10万ドル(約1,100万円)を支払うという判決が出たりする等。
ちなみに、森林や海岸近くなどの自然界にもオゾンは0.01~0.05ppm程度の濃度で存在しています。

②家電製品
オゾンが使われる身近な例として、家電製品が挙げられます。
エアコンや冷蔵庫などの場合、製品内部の脱臭、除菌等を目的としてオゾンが利用されています。
エアコンや冷蔵庫は、オゾンが室内には漏れ出ないような構造になっており、万が一漏れ出た場合に0.05ppm以下に設定されているケースがため、人体への影響は見られないようになっているのです。
家電製品は有人環境に設置されることが前提のため、こちらも「有人環境における安全性」を考慮し、「0.05ppm以下」とされています。

【結論】
有人環境でオゾン発生器を使用する場合は、0.05ppmというオゾン濃度が1つの目安であり、それ以下であれば安全の範囲である、という結論になります。
実際、家庭用のオゾン発生器は室内のオゾン濃度が0.05ppm程度(平均値)になるように「適用範囲」を周知しています。ですから、メーカー各社の適用範囲は無視せずに必ずお守り下さい。
 

無人環境(業務用)におけるオゾンの安全性

先に説明したとおり、「業務用」と「家庭用」の振り分けは、そのオゾン発生量や運転方式等によってメーカー各社が決めています。
では、「無人環境で作業を行う場合、そのオゾン濃度は◯◯ppm以下にしなさい」あるいは「◯◯ppmが適切である」などと国や団体等によって決められているのかというと、答えは「No」です。
しかしながら、「有人での作業環境基準」ならあります。

①作業環境基準
日本国内では、日本産業衛生学会の「許容濃度:0.1ppm(0.2mg/m3)」という基準がひとつの目安にされています。
許容濃度とは、労働者が1日8時間、週40時間程度、肉体的に激しくない労働強度で有害物質に曝露される場合に、当該有害物質の平均曝露濃度がこの数値以下であれば、ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響がみられないと判断される濃度。
これはあくまでも「そのオゾン濃度の環境下に身をおいて作業するのであれば」ということであり、無人環境で行われるオゾンの消臭除菌作業は0.3〜1.0ppm程度までオゾン濃度を高めて行われるケースがほとんどです。特に、清掃業のなかでも、厳しい環境が多い特殊清掃の現場では意図的にそれ以上のオゾン濃度まで高めて作業が行われていますが、何度も言うようにそれは「無人環境」で行われます。
より詳しくオゾン濃度を知りたい方は「消臭作業に適正なオゾン濃度とは」をご覧下さい。

②業務用オゾン発生設備等
高濃度オゾン研究専門委員会が「オゾン利用に関する安全管理基準」を提唱しています。参考までに、委員会が提唱する安全管理基準の一部を以下に抜粋します。

  • 発生オゾン濃度、冷却箇所の温度および冷却媒体の流量計測値が設定値を超えた場合、警報を発する手段を講じること。
  • オゾン発生設備が収納されている室のオゾン濃度が0.1ppmを超えた場合、警報を発する手段を講じること。

これもあくまでも「有人で作業を行う環境での基準」であり、無人環境で行われる作業濃度はほとんどのケースで0.3〜1.0ppm程度のオゾン濃度で行われているのが現状です。
ましてや、特殊清掃の現場などにおいては1.0ppmを大幅に超過するオゾン濃度で作業を行うこともしばしばあります。
このとき、「えっ、作業環境基準では0.1ppmが基準なのに、1.0ppmを上回るオゾン濃度なんて危険なのでは!?」と思う方がいるかもしれません。(大事なポイント)

仮にオゾン濃度が 2.0ppmであったとしても何ら問題はありません。健康被害なども絶対にあり得ません。何故なら、業務用オゾン発生器はそもそも無人環境で使用する機器であり、そのオゾン濃度の環境に人や動物はいないからです。

【結論】
オゾン環境下で長時間の作業をするのであれば0.1ppmが安全を絶対的に確保できる濃度であり、無人環境であればオゾン濃度は1.0ppmを超過しても安全である、という結論になります。
しかし、だからといって「無人環境であれば、オゾン濃度はどれだけ高くても一切関係なく安全だ」とは思わないで下さい。
何故なら、作業中は無人環境で行われても、作業が終わったときには、機器の回収や換気のために作業者が(数十秒〜数分)室内空間に入る必要があるからです。
室内に放出したオゾンは悪臭成分と分解反応を起こし、その後は酸素に戻ります。そのため、仮に作業中のピークとなるオゾン濃度が1.0ppmであった場合、室内のオゾン濃度はそこから徐々に低下し、作業者が入室する時点では概ね0.2〜0.6ppm程度になっています。消臭作業時のピークのオゾン濃度が高ければ高いほど、作業完了直後に残っているオゾン濃度も高くなります。ですから、短時間とはいえ、このときの作業者の安全性をしっかりと確保する意味でも、消臭除菌作業時のオゾン濃度は1.0ppm程度を上限としてお考え下さい。
※オゾン濃度は0.3〜1.0ppm程度で業務レベルの除菌(殺菌)といわれているほど効果があります。
 

オゾンの危険性

オゾンの危険性
では、次にオゾンの危険性について説明します。
前項で安全性についてはご理解いただけたと思いますが、では、その安全性を無視した場合、どのような危険が伴うのでしょうか。
オゾン濃度別に人体に与える影響を表にまとめます。

オゾン濃度(ppm) 作用または症状
0.01-0.02 多少の臭気を感じる(すぐに慣れる)
0.1 明らかな臭気。鼻や喉に刺激を感じる。ここまでが有人環境で許容される濃度。
0.2-0.5 3-6時間の曝露で視力が低下する。
0.5-0.9 気道に明らかな刺激を感じる。
1-2 2時間ほどの曝露で頭痛、胸部痛、気道の乾きと咳が起こる。さらに長時間曝露し続けると慢性中毒になる恐れがある。
5-10 脈拍増加、体の痛み、麻酔症状が表れる。曝露が続けば、肺水腫になる恐れがある。
15-20 小動物が2時間以内に死亡する。
50 人が1時間で生命危険となる。

この表をみると、「オゾンって怖い…」と感じてしまう人もいるかもしれませんが、では、「オゾンで重大な事故は年間で何件あるのか」といわれると、実はゼロです。
というのは、1日8時間・週40時間が許容されている0.1ppmという濃度ですでに、「明らかな臭気を鼻や喉に感じる」からです。無味無臭の危険な物質では気付かずに…という可能性も考えられますが、オゾンに関してはオゾン特有の「オゾン臭」と呼ばれている臭気を感じることができるため、事前にその危険性を察知できることが、オゾンに関する重大事故がゼロであることにつながっていると考えられています。

また、0.2-0.5ppm以上の濃度に関して「作用または症状」の列に書かれていることは、数時間そこに滞在した場合という意味です。たとえば、5-10ppmの「作用または症状」の列には「脈拍増加、体の痛み、麻酔症状が表れる。曝露が続けば、肺水腫になる恐れがある」とありますが、そのオゾン濃度環境下に数分あるいは数十分いたからといって、そうなるわけではありません。第一、そのような高濃度環境は市販の業務用オゾン発生器では作れませんし、仮にその環境を作れたとしても、通常の人であれば目や鼻、あるいは喉等に刺激を感じ数秒あるいは数十秒で退避するはずなので特段心配する必要はないでしょう。
ただ、オゾンは濃度によっては危険を及ぼすことがあるということは忘れないようにしましょう。
 

オゾンの安全性と危険性の大事なポイント

オゾンの安全性と危険性の大事なポイント
オゾンの安全性と危険性について復習する意味も込めてその特徴を箇条書きでまとめます。

  • 家庭用製品は有人環境で使用する
  • 業務用製品は無人環境で使用する
  • 有人環境で使用する場合はオゾン濃度0.05ppmが安全の目安(多くの家庭用製品がこれを基準にしている)
  • 無人環境で使用する場合はオゾン濃度をさほど気にしなくてもよい(ただし1.0ppm程度が理想)
  • オゾン環境下で作業をする(有人環境)場合の上限値は0.1ppm
  • 無人環境で作業を行う際のオゾン濃度について特別な取り決めや基準はない
  • 多くの場合、無人環境ではオゾン濃度0.3〜1.0ppmで作業が行われている

 

まとめ〜結局は正しく使えば安全だし、誤った使い方をすれば危険という普通の話

ここまでお読みいただいた方にはご理解いただけたと思いますが、実はこの世に「安全なもの」というのは存在しません。

そこにあるのは「安全な濃度」や「安全な量」なのです。

オゾンに限らず、フッ素や塩素、次亜塩素だけではなく、絶対的に安全だと思い込まれている酸素でさえも濃度や量を誤れば人体に危険を及ぼします。
※オゾンで死亡例はありませんが酸素の過剰摂取(スクーバダイビング時の酸素中毒等)で死亡例はたくさんあります。

たとえば、「ガスコンロは危険なのか」と問われれば、「使い方による」としか答えようがありません。
ガスコンロはガスと火を扱うため、不完全燃焼の可能性もありますし、ヤケドの恐れもあります。あるいは火災になり命を落とすかもしれません。
しかし、正しい使い方をすれば安全です。

薬も同じです。
用法と用量を守らなければ、薬は一転して毒にもなり得るのです。

オゾン発生器の場合、「濃度」と「利用環境(有人または無人)」によって安全にも危険にもなります。
逆に考えれば「濃度」と「利用環境(有人または無人)」さえ守れば絶対的に安全なのです。

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